モノグラフ: オンデザイン

住宅特集 2010年4月号


住宅を外部化する思考
今回、最近のオンデザインの「活動と思考」を紹介する特集として、モノグラフのお話を
頂きました。
オンデザインでは、竣工後、すべての住宅に対してスケッチやコラージュ、ドローイング
をあらためて制作し、作品の思考を外部に伝えようと試みてきました。住宅という私的な
ものを、より公に表明し、社会に建築をつくる行為を新たなかたちで伝えようというもの
です。今回のモノグラフでは、ひとつひとつの作品を発表するというより、住宅を外部化
する思考の総体として何が見えるかを、表せればと思います。
オンデザインの仕事は、ほとんどが住宅ですが、固有のスタイルはありません。住宅を考
える時、与条件はいつも私たちの外にあります。当然、敷地や時代性もありますが、住宅
において、もっとも大きな与条件は建主だと考えています。建主の要望からスタートし、
建主のお金で、彼らの財産をつくります。引渡をしてしまえば、そこに自由に入ることも
できなくなります。
ところで、彼らはみんな住宅がほしいと依頼されますが、要望を聞いてみると、本当に彼
らがほしいのは住宅なのか疑いたくなります。住むということは同じはずなのに、個々に
かなりの差があって、むしろ共通項は減ってきているのです。それだけ生活が多様になっ
ているのだとしたら、それひとつひとつを建築にした総体は、現在の生活の批評となるの
ではないかと思いました。だから、この個別性に可能性をみて、スタイルをもたず、私た
ちは設計作業をスタートします。
その個別性をなんとかわかりやすく記述できないかとはじめたのが、竣工後のスケッチと
ドローイングなのだと思います。それは写真や図面とは違う情報を伝えるためのツールと
して、外部にリリースすることを全体に制作するもので、次の自分たちの設計作業の際に
参照する参考資料でもあります。
制作してみたものの、この作品を伝えるにはやっぱり写真の方がいいということもよくあ
るし、図面でしか伝わらないこともたくさんあります。ただ、必ず個別のスケッチを描い
たうえで判断するのがルールとなっています。
竣工後にこういった思考のおさらいと編集、考察のような作業を毎回して、その都度もっ
とも情報として適切なものを選択して残していますが、ある日、そんな作業は与条件を整
理して解釈し、建築に結実させていく作業ととても似ているように感じ始めました。
今回のモノグラフは、その試行をまとまったかたちで見ていただくものです。前半では、
竣工後の作業の結果を、建主の要望と共に掲載しています。そして後半では、進行中のプ
ロジェクトのスケッチと建主の要望を並べてみました。こうしてみると、はじめの建主の
要望は、自分たちが書く設計趣旨のテキストと同じくらいの情報をもっていることに気が
付きます。
今回掲載している進行中プロジェクトのスケッチが、竣工後に別のスケッチになる頃、今
はまだはっきりとは見えていない個別解以上の何かが伝えられることを期待して、私たち
は今日も設計作業を進めています。

(西田司/オンデザイン)